053白雪姫
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はじめに
皆さん、こんにちは。今日はお馴染みの「白雪姫」の物語をご紹介させていただきます。
この物語には、私たちの日常生活にも通用する大切な教訓が隠されています。美しさへの執着、他者を蹴落とす栄光、学びの大切さ、そして困難と幸せ。これらの教訓から、私たちはどのようなことを学ぶことができるでしょうか。
物語の始まりは、ある美しい王妃の物語でした。しかし、彼女の内面の醜さは隠しきれずにいたのです。
それでは、「白雪姫」の物語をお楽しみください。そこから、私たちの人生に活かせる大切な教訓を見つけ出していきましょう。
昔、寒い寒い真冬のことでした。雪が鳥の羽のように、ひらひらと空から降っていました。その時、一人の女王さまが、黒檀の枠にはまった窓辺に座って縫い物をしていました。女王さまは、縫い物をしながら雪を眺めていましたが、チクリと指を針で刺しました。
すると、雪が積もった中に、ポタポタと三滴の血が落ちました。真っ白な雪の中で、その真っ赤な血の色がとても美しいと感じたので、女王さまは一人でこんなことを考えました。
「どうか私は、雪のように肌が白く血のように赤い美しい頬を持ち、この黒檀の枠のように黒い髪をした子が欲しい。」
それからしばらくして、女王さまは一人のお姫さまを産みました。そのお姫さまは肌が雪のように白く、頬は血のように赤く、髪の毛は黒檀のように黒く光っていました。それで名前を白雪姫と名付けました。しかし、女王さまはこのお姫さまが生まれた後すぐに亡くなりました。
一年以上経った後、王さまは新しい女王さまを迎えました。その女王さまは美しい方でしたが、とても自惚れが強くわがままな方で、自分よりも他の人が少しでも美しいと、じっとしてはいられない方でした。
ところが、この女王さまは以前から一つの不思議な鏡を持っていました。その鏡を見る時はいつでもこう言います。
「鏡よ、鏡、壁に掛かっている鏡よ。街中で誰が一番美しいか、教えておくれ。」
すると、鏡はいつもこう答えていました。
「女王さま、あなたこそ街で一番美しい。」
それを聞いて女王さまは安心します。というのは、この鏡は嘘をつかないということを、女王さまはよく知っていたからです。
そのうちに白雪姫は、大きくなるにつれて、だんだん美しくなってきました。お姫さまがちょうど七つになったときには、青々と晴れた日のように美しくなって、女王さまよりもずっと美しくなりました。
ある日、女王さまは鏡の前に立って尋ねました。
「鏡よ、鏡、壁に掛かっている鏡よ。街中で誰が一番美しいか、教えておくれ。」
すると、鏡は答えました。
「女王さま、ここではあなたが一番美しい。けれども白雪姫は、千倍も美しい。」
女王さまはこのことを聞いて驚いて、嫉妬して、顔色を黄色くしたり青くしたりしました。
それからというもの、女王さまは白雪姫を見るたびに、ひどくいじめるようになりました。そして、嫉妬と高慢とが、野原の草がいっぱいはびこるように、女王さまの心の中にだんだんとはびこってきましたので、今では夜も昼も、もうじっとしてはいられなくなりました。
そこで女王さまは、一人の狩人を自分のところに呼んでこう命じました。
「あの子を森の中に連れて行ってくれ。私はもうあの子を二度と見たくないんだから。だがお前はあの子を殺してその証拠に、あの子の血をこのハンカチに付けてこなければならない。」
狩人は、その命令に従って白雪姫を森の中へ連れて行きました。狩人が狩りに使う刀を抜いて、何も知らない白雪姫の胸を突こうとしますと、お姫さまは泣いて言いました。
「ああ狩人さん、私を助けてください。その代わり、私は森の奥の方に入って行って、もう家には絶対に帰らないから。」
これを聞くと狩人も、お姫さまがあまりに美しかったので、かわいそうになってしまって、
「じゃあ早く逃げなさい。かわいそうなお子さまだ。」と言いました。
「きっと、獣がすぐ出てきて食べてしまうだろう。」と心の中で思いましたが、お姫さまを殺さないで済んだので、胸の上から重い石でも取れたように、楽な気持ちになりました。
ちょうどそのとき、イノシシの子が向こうから飛び出してきましたので、狩人はそれを殺して、その血をハンカチに付けてお姫さまを殺した証拠に、女王さまのところに持って行きました。女王さまはそれを見て、すっかり安心して白雪姫は死んだものと思っていました。
さて、かわいそうなお姫さまは、大きな森の中でたった一人ぼっちになってしまって、怖くてたまらずいろいろな木の葉っぱを見ても、どうしてよいのかわからないくらいでした。お姫さまは、とにかく走り出してとがった石の上を飛び越えたり、イバラの中を突き抜けたりして、森の奥の方へと進んで行きました。
ところが、獣はそばを走り過ぎますけれども、少しもお姫さまを傷つけようとはしませんでした。白雪姫は足のつく限り走り続けて、とうとう夕方になるころに一軒の小さな家を見つけましたので、疲れを休めようと思って、その中に入りました。その家の中にあるものは、何でもみんな小さいものばかりでしたが、何とも言えないくらい立派で、清らかでした。
その部屋の真ん中には一つの白い布をかけたテーブルがあり、その上には七つの小さな皿が並んでいて、それぞれにスプーン、ナイフ、フォークが付いていました。
さらに七つの小さな酒杯も置いてありました。
そして壁際には、七つの小さなベッドが少し間を開けて順に並んでいて、その上には皆、雪のように白い麻の敷布が敷いてありました。
白雪姫はとてもお腹が空いて喉も乾いていましたから、一つ一つの皿から少しずつ野菜のスープとパンを食べ、それから一つ一つの酒杯から一滴ずつブドウ酒を飲みました。
それは一つの場所のものを全部食べてしまうのは悪いと思ったからでした。
食べ終わってしまうと今度はとても疲れていましたから寝ようと思って、一つのベッドに入ってみました。
しかしどれもこれもちょうど体に合いませんでした。
長すぎたり短すぎたりしましたが、最後に七番目のベッドがやっと体に合いました。
それでそのベッドに入って神様に祈りを捧げて、そのままぐっすり眠ってしまいました。
日が暮れて周りが真っ暗になったときに、この小さな家の主人たちが帰ってきました。
その主人たちというのは、七人の小人でした。
この小人たちは毎日山の中に入り込んで、金や銀の入った石を探して選別したり、掘り出したりするのが仕事でした。
小人たちは自分たちの七つのランプに火をつけました。
すると家の中がパッと明るくなりました。
誰かがその中にいるということがわかりました。
それは、小人たちが家を出かけたときのように、色々なものがちゃんとそこに置いていなかったからでした。
一番目の小人がまず口を開いて言いました。
「誰か私の椅子に腰をかけた人がいるぞ。」
すると、二番目の小人が言いました。
「誰か私の皿のものを少し食べた人がいるぞ。」
三番目の小人が言いました。
「誰か私のパンをちぎった人がいるぞ。」
四番目の小人が言いました。
「誰か私の野菜を食べた人がいるぞ。」
五番目の小人が言いました。
「誰か私のフォークを使った人がいるぞ。」
六番目の小人が言いました。
「誰か私のナイフで切った人がいるぞ。」
七番目の小人が言いました。
「誰か私の酒杯で飲んだ人がいるぞ。」
最初の小人が周りを見回すと、自分の寝床がくぼんでいるのを見つけて声を上げました。
「誰が私の寝床に入り込んだのだ。」
すると他の小人たちが寝床へ駆けつけてきて、騒ぎ始めました。
「私の寝床にも誰かが寝ているぞ。」
しかし七番目の小人が自分の寝床を見てみると、その中に入って寝ている白雪姫を見つけました。
今度は七番目の小人が皆を呼びますと、皆は何が起こったのかと思って駆け寄ってきて、驚いて声を上げながら七つのランプを持ってきて白雪姫を照らしました。
「おやおや、なんてこの子はきれいなんだろう。」と、小人たちは叫びました。
それから小人たちは大喜びで、白雪姫を起こさないで寝床の中にそのままそっと寝かせておきました。
そして七番目の小人は、一時間ずつ他の小人の寝床で寝るようにして、その夜を明かしました。
朝になって、白雪姫は目を覚まして、七人の小人を見て驚きました。
しかし小人たちはとても親切にしてくれて、「あなたの名前は何というのかな。」と尋ねました。
すると、「私の名前は、白雪姫というのです。」と、お姫さまは答えました。
「あなたはどうして私たちの家に入ってきたのかね。」と、小人たちは尋ねました。
そこでお姫さまは母が自分を殺そうとしたのを、狩人がそっと助けてくれたので、一日中走り回って、やっとこの家を見つけたことを小人たちに話しました。
その話を聞いて、小人たちは、
「もしもあなたが私たちの家の中の仕事をちゃんと引き受けて、炊事もすれば、男仕事も、洗濯も、縫い物も、編み物も、きちんときれいにする気があれば、私たちはあなたを家においてあげて何も不足のないようにしてあげるんだが。」と言いました。
「どうぞお願いします。」と、お姫さまは頼みました。
それから白雪姫は、小人たちの家にいることになりました。
白雪姫は小人の家の仕事をきちんとやります。
小人の方では毎朝山に入り込んで、金や銀の入った石を探し、夜になると家に帰ってくるのでした。
その時までにご飯の支度をしておかなければなりませんでした。
ですから昼間は白雪姫は、一人で留守をしなければなりませんので、親切な小人たちはこんなことを言いました。
「あなたの母さんに用心なさいよ。
あなたがここにいることを、すぐ知るに違いない。
だから誰もこの家の中に入れてはいけないよ。」
女王さまは狩人が白雪姫を殺してしまったと思い込んで、自分が再び一番美しい女性になったと安心していました。
ある時鏡の前に立って言いました。
「鏡よ鏡よ、壁にかかっている鏡よ。
この国中で誰が一番美しいか教えておくれ。」
すると鏡が答えました。
「女王さま、ここではあなたが一番美しい。
しかし、いくつもの山を越えた先、七人の小人の家にいる白雪姫はまだ千倍も美しい。」
これを聞いた時の女王さまの驚きようといったらありませんでした。この鏡は決して間違ったことを言わないということを知っていましたので、狩人が自分を騙したということも、白雪姫がまだ生きているということもすぐに理解しました。そこで何とかして白雪姫を殺してしまいたいと思い、再び新たな計画を練り始めました。
女王さまは、この国中で自分が一番美しい女性にならない限り、羨ましくてどうしても安心できませんでした。
そこで女王さまは最終的に一つの策略を考え出しました。そして自分の顔を黒く塗り年寄りの雑貨屋のような服を着て、誰にも女王さまだとは思えないように変装しました。このようにして七つの山を越えて、七人の小人の家に行き戸をトントンと叩いて言いました。
「良い商品がありますが買いませんか。」
白雪姫は何かと思って、窓から首を出して呼びました。
「こんにちはおばさん、何があるの。」
「上等な品で、きれいな品を持ってきました。色々な色の絹糸で編んだ紐があります。」と言って色々な色の絹糸で編んだ紐を一つ取り出しました。
白雪姫は、「この正直そうなおばさんなら、家の中に入れても大丈夫だろう。」と思い、戸を開けてきれいな紐を買い取りました。
「お嬢さんにはよく似合うでしょう。さあ、私が一つしっかりと結んであげましょう。」と、年寄りの雑貨屋は言いました。
白雪姫はすこしもうたがう気がありませんから、そのおかみさんの前に立ってあたらしい買いたてのひもでむすばせました。するとそのばあさんはすばやく、そのしめひもを白雪姫の首をまきつけて、強くしめましたので、息ができなくなって、死んだようにたおれてしまいました。
「さあこれでわたしがいちばんうつくしい女になったのだ。」といってまま母はいそいででていってしまいました。
それからまもなく日がくれて、七人の小人こびとたちが家にかえってきましたが、かわいがっていた白雪姫が、地べたの上にたおれているのを見たときには、小人たちのおどろきようといったらありませんでした。
白雪姫はまるで死人のように息もしなければ、動きもしませんでした。みんなで白雪姫を地べたから高いところにつれていきました。そしてのどのところがかたくしめつけられているのを見て、小人たちは、しめひもを二つに切ってしまいました。するとすこし息をしはじめて、だんだん元気づいてきました。小人たちはどんなことがあったのかをききますと、姫はきょうあったいっさいのことを話しました。
その小間物売こまものうりの女こそ、鬼のような女王にちがいない。よく気をつけなさいよ。わたしたちがそばにいないときにはどんな人だって、家にいれないようにするんですよ。
わるい女王は、家にかえってくるとすぐ鏡かがみの前にいって、たずねました。
「鏡や、鏡、壁かべにかかっている鏡よ。
国じゅうでだれがいちばんうつくしいかいっておくれ。」
すると、鏡は、正直しょうじきにまえとおなじに答えました。
「女王さま、ここではあなたがいちばんうつくしい。
けれども、いくつも山をこした七人の小人こびとの家にいる白雪姫はまだ千ばいもうつくしい。」
女王さまがこれを聞いたときには体中の血が一瞬にして、胸によってきたかと思うくらい驚いてしまいました。白雪姫が、また生き返ったということを知ったからです。
「よし今度こそは、お前を本当に殺してしまうようなことを工夫してやるぞ。」そう言って自分の知っている魔法を使って一つの毒を塗った櫛を作りました。
それから女王さまは、見かけを変え前とは別なおばあさんの姿になって、七つの山を越え七人の小人のところに行ってトントンと戸を叩いて、言いました。
「良い商品がありますが買いませんか。」
白雪姫は、中から少し顔を出して、
「さああっちに行って下さい。誰もここに入れないことになっているんですから。」
「でも見るだけなら構わないでしょう。」
おばあさんはそう言って毒のついている櫛を箱から取り出し、手のひらに乗せて高く差し上げて見せました。白雪姫はその櫛が馬鹿に気に入りましたので気を取られて、思わず戸を開けてしまいました。そして櫛を買うことが決まったときにおばあさんは、
「では私が一つ、良い具合に髪を梳かしてあげましょう。」と言いました。
可哀想な白雪姫は何の疑いもなく、おばあさんの言う通りにしました。しかし櫛の歯が髪の毛の間に入るか入らないうちに、恐ろしい毒が姫の頭に染み込んだものですから、姫はその場で気を失って倒れてしまいました。
「いくらお前がきれいでも今度こそ終わりだろう。」と、心の歪んだ女は陰険な笑いを浮かべながら、そこを出て行ってしまいました。
しかしちょうど良い具合にすぐ夕方になって、七人の小人たちが帰ってきました。そして白雪姫がまた死んだようになって床に倒れているのを見て、すぐ母親の仕業だと気づきました。それで色々と姫の体を調べてみますと、毒の塗られた櫛が見つかりましたので、それを引き抜きますとすぐに姫は息を吹き返しました。そして今日のことをすっかり小人たちに話しました。小人たちは、白雪姫に向かってもう一度、よく用心して絶対に誰が来ても戸を開けてはいけないと注意しました。
心の歪んだ女王さまは、家に帰って、鏡の前に立って言いました。
「鏡よ、鏡よ、壁にかかっている鏡よ。
国中で誰が一番美しいか教えておくれ。」
すると鏡は、前と同じように答えました。
「女王さまここではあなたが一番美しい。
しかしいくつもの山を越えた先、七人の小人の家にいる白雪姫は、まだ千倍も美しい。」
女王さまは鏡がこう言ったのを聞いたとき、あまりの腹立ちに体中をブルブルと震わせて悔しがりました。
「白雪姫のやつどうしたって殺さないではおくものか。たとえ私の命がなくなってもそうしてやるのだ。」と、大きな声で言いました。
それからすぐ女王さまはまだ誰も入ったことのない、離れた秘密の部屋に行ってそこで、毒の上に毒を塗った一つのリンゴを作りました。
そのリンゴは見かけはとても美しくて白いところに赤みを持っていて、一目見ると誰でもかじりつきたくなるようにしてありました。しかしその一切れでも食べようものならそれこそ、たちどころに死んでしまうという、恐ろしいリンゴでした。
さて、リンゴがすっかりでき上がりました。顔を黒く塗って、農夫の奥さんの風を装い、七つの山を越えて、七人の小人たちの家へ行きました。そして戸をトントンと叩きました。
すると白雪姫が窓から頭を出して、
「七人の小人たちがダメだと言いましたから、私は誰も中に入れるわけにはいきません。」と言いました。
「いいえ、入らなくてもいいんですよ。私は今、リンゴを捨てようかと思っているところなので、あなたにも一つあげようかと思っています。」と、農夫の女は言いました。
「いいえ私はどんなものでも人からもらってはいけないのです。」白雪姫は断りました。
「あなたは毒でも入っていると思っているのですか。まあご覧なさい。この通り二つに切って、半分は私が食べましょう。よく熟れた赤い方をあなたにどうぞ。」と言いました。
そのリンゴは、大変上手に作られていて赤い方の皮だけに毒が入っていました。白雪姫は農夫の奥さんが、とても美味しそうに食べているのを見て、その綺麗なリンゴが欲しくてたまらなくなりました。
それでつい何の気なしに手を出して、毒が入っている方の半分を受け取ってしまいました。
一口口に入れるか入れないうちにバッタリと倒れ、そのまま息が絶えてしまいました。すると女王さまはその様子を恐ろしい目つきで見つめて、とても嬉しそうに大きな声で笑いながら、
「雪のように白く、血のように赤く、黒檀のように黒いやつ、今度こそは小人たちだって助けることはできないだろう。」と言いました。そして大急ぎで家に帰りました。
するとまず鏡のところに駆けつけて尋ねました。
「鏡よ、鏡、壁に掛かっている鏡よ。
国中で、誰が一番美しいか、教えておくれ。」
するととうとう鏡が答えました。
「女王さま、お国で一番、あなたが美しい。」
これで、女王さまの妬み深い心も、やっと静めることができて、本当に落ち着いた気持ちになりました。
夕方になって、小人たちは家に帰ってきましたが、大変なことにまた白雪姫が地面に倒れているではありませんか。驚いて駆け寄ってみれば、もう姫の口からは息一つすらしていません。可哀想に死んでもう冷え切ってしまっているのでした。
小人たちは、お姫さまを高いところに運んでいって何か毒になるものはありはしないかと、探してみたり、紐を解いたり、髪の毛を梳いたり、水やお酒でよく洗ってみたりしましたが、何の役にも立ちませんでした。みんなで可愛がっていた子供は、こうして本当に死んでしまって二度と生き返りませんでした。
小人たちは白雪姫の体を一つの棺の上に乗せました。そして、七人の者が残らずその周りに座って、三日三晩泣き暮らしました。それから姫を埋めようと思いましたが何しろ姫はまだ生きていた時そのままで、生き生きと顔色も赤く、可愛らしく、綺麗なものですから小人たちは、
「まあ見てよこれを、あの真っ黒い土の中に埋めることなんかできるものか。」
そう言って外から中が見られるガラスの棺を作り、その中に姫の体を寝かせその上に金文字で白雪姫という名を書き、王さまのお姫さまであるということも書き添えておきました。
それからみんなで、棺を山の上に運び上げ七人のうちの一人が、いつでもそのそばにいて番をすることになりました。すると、鳥や、獣までが、そこにやってきて、白雪姫のことを泣き悲しむのでした。一番最初に来たのは、フクロウで、その次がカラス、一番最後にハトが来ました。
さて、白雪姫は、長い長い間棺の中に横になっていましたが、その体は少しも変わらず、まるで眠っているようにしか見えませんでした。お姫さまはまだ雪のように白く、血のように赤く、黒檀のように黒い髪の毛をしていました。
するとそのうちある日のこと、一人の王子が森の中に迷い込んで、七人の小人の家に来て一晩泊まりました。王子はふと山の上に来てガラスの棺に目を止めました。近寄って覗きますと実に美しい美しい少女の体が入っています。しばらく我を忘れて見とれていました王子は、棺の上に金文字で書いてある言葉を読みすぐ小人たちに、
「この棺を私に譲ってくれませんか。その代わり私は何でもあなたたちの欲しいと思うものをあげるから。」と言いました。
けれども小人たちは、
「たとえ私たちが世界中のお金を全部頂いても、こればかりは差し上げられません。」と答えました。
「そうだこれに代わるお礼なんてあるものじゃない。だが私は白雪姫を見ないではもう生きていられない。お礼なんてしないからただください。私の生きている間は白雪姫を尊敬しきっと粗末にはしないから。」
王子が、こんなにまで言うので、気立ての良い小人たちは王子の気持ちを気の毒に思って、その棺を差し上げることにしました。王子はそれを家来たちに命じて、肩に担いで運ばせました。
ところがまもなく家来の一人が一本の木につまずきました。
すると棺が揺れた瞬間に、白雪姫が噛み切った毒のリンゴの一欠片が喉から飛び出しました。するとまもなく、お姫さまは目をパッチリ開いて、棺の蓋を持ち上げて起き上がってきました。
「おやまあ、私はどこにいるんでしょう。」と言いました。それを聞いた王子の喜びは言葉にできませんでした。
「私のそばにいるんですよ。」と言って、今まであったことを話しました。その後、
「私は、あなたが世界中の何ものよりも可愛いのです。さあ、私のお父さんのお城へ一緒に行きましょう。そしてあなたは私のお嫁さんになってください。」と言いました。
そこで白雪姫もうなずくと王子と一緒にお城に行きました。そして二人の結婚式はできるだけ立派に盛大に行われることになりました。
しかし、このお祝いの式には白雪姫の義母である女王さまも招かれることになりました。女王さまは若い花嫁が白雪姫だとは知りませんでした。女王さまは美しい着物を着ていました。そして鏡の前に行って尋ねました。
「鏡よ、鏡、壁に掛かっている鏡よ。国中で誰が一番美しいか教えておくれ。」
鏡は答えて言いました。
「女王さま、ここではあなたが一番美しい。しかし、若い女王さまは千倍も美しい。」
これを聞いた悪い女王さまは腹を立てて、呪いの言葉を次々に浴びせかけました。そして気になって気になってどうして良いか分からないくらいでした。女王さまは、始めのうちは、もう結婚式には行くのをやめようかと思いました。それでも自分で出かけて行って、その若い女王さまを見ないでは、とても安心できませんでした。
女王さまは、招かれた宮殿に入りました。そしてふと見れば、若い女王になる人とは白雪姫ではありませんか。女王は恐ろしさでそこに立ちすくんだまま動くことができなくなりました。しかし、鉄の靴がすでに火にかけられ、はさみでつかんで運び込まれお后の前におかれました。それから真っ赤な熱い靴を履かされ踊らされ、とうとう倒れて死んでしまいました。
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