038奥様きつねのご結婚
現代語訳:Relax Stories TV
昔々、尻尾が九本ある古狐がいました。この狐は、自分の奥さんが心変わりしたのではないかと疑い、奥さんを試すことにしました。
そのため、古狐は腰掛け台の下で大の字になり、まるで殺されたネズミのように、死んだふりをしていました。
奥さん狐は自分の部屋に行き、閉じこもりました。奥さん狐のお手伝いさんである猫は、炬燵の上に座って、ご飯を炊いていました。
やがて、古狐が死んだことが知れ渡ると、奥さん狐を嫁に欲しいという者が何人も訪ねてきました。お手伝いさんは、誰かが戸口でコツコツと戸を叩いているのを聞きつけました。立って行って、戸を開けてみると、若い狐が一匹立っていて、こう言いました。
「何をしているの? 猫さん、寝ているの? 起きているの?」
猫が答えました。
「私なら、寝てなんかいないわ、起きてるわ。何をしているのか、知りたいの? ビールをグツグツ煮立てて、バターを中に入れてるの。あなた、私のお客さんになって?」
「いや、ありがとう、猫さん」と、狐が言いました。「奥さん狐は、どうしているの?」
お手伝いさんは答えました。
「奥さん狐は部屋にいて、悲しくて泣いているわ。可愛い目は紅絹のように赤い、お狐の旦那様が亡くなったから」
「猫さん、どうか奥さんに伝えてください。若い狐が訪ねてきましたってね。その狐が、奥さんに、嫁になっていただきたいのですってね」
「若い方、了解しました」
ピタリ、パタリと猫が行く。とたん、パタンと戸が開いた。
「狐の奥さん、いらっしゃいますか?」
「いるわよ、猫ちゃん」
「奥さんを、嫁に欲しいというかたが」
「あらまあ、そうなの、どんな様子?」
「そのかたもね、亡くなった旦那様狐みたいに、黄色いような青いような素晴らしい尻尾が、九本あること?」
「どういたしまして」と、猫が答えました。「尻尾は、たった一本です」
「では、そのかたはごめんなさい」
お手伝いさん猫は部屋を出て、嫁になりたい狐を帰しました。
それから間もなく、また戸を叩くものがありました。出てみると、別の狐が戸口にいて、奥さん狐を嫁に欲しいと言うのです。これは、尻尾が二本でしたけれども、前のと同じように見えました。それからも、次々と他のが来て、尻尾も一本ずつ増えていましたが、どれもこれも、追い払われました。
ただ、一番最後に来たのだけは、亡くなった旦那様狐とそっくり、九尾の狐でした。未亡人さんはこれを聞くと大喜びで、猫に言いました。
「さあ、門を開けて、戸を開けて! 追い出すのよ、亡くなった旦那様の狐を」
ところが、いざ結婚式が挙げられるという時になって、亡くなった旦那様の狐が、腰掛け台の下で、もぞもぞ動き出して、家の者たちを、一匹残らず、ぴしぴし叩き、奥さん狐と一緒に家から追い出してしまいました。
2つ目のお話
おじいさん狐が亡くなってから、奥さん狐は新しい夫を探していました。そこへ狼が訪れ、ドアをノックしました。奥さん狐の家でメイドとして働いている猫がドアを開けました。狼は猫に挨拶し、話し始めました。
「こんにちは! ケーレウィッツの猫さん、どうして一人ぼっちなのですか? ご馳走は何ですか?」
猫は答えました。
「上等な小麦のパンを粉にして、お茶に入れています。あなた、私のお客さんになりますか?」
「ありがとう、猫さん」と、狼が答えました。「奥さん狐は、家にいますか?」
猫が言いました。
「奥さん狐は二階の部屋で、悲しくて、大泣きしています。どうしたらいいのかと泣いています、おじいさん狐が亡くなったからです」
狼が答えました。
「奥さん狐が、もう一度夫が欲しいなら、ここまで降りてきてください」
猫は階段を駆け上がり、慣れた小廊下を曲がり、やがて広い部屋に到着し、五つの金の指輪で、トントントンと、ドアをノックします。
「狐の奥さん、いらっしゃいますか? 奥さんが、もう一度夫が欲しいなら、下まで降りてきてください」
奥さん狐が尋ねました。
「そのかたは、赤いズボンをはいていますか? 尖った口をしていますか?」
「いいえ」と、猫が答えました。
「それでは、私の条件には合いません」
狼が肘鉄砲を食らってから、犬だの、鹿だの、兎だの、熊だの、ライオンだの、次々と、森の動物が訪れました。しかし、どれもこれも、おじいさん狐が持っていたいろいろな良い性質のうち、一つだけは必ず持っていなかったので、猫は、その度に、結婚したい者に帰ってもらわなければなりませんでした。
やっとのことで、若い狐が一匹やってきました。奥さん狐が尋ねると、
「その方、赤いズボンをはいていますか? 尖った口をしていますか?」
「その通りです」と、猫が言いました。
奥さん狐は、
「それなら、その方を、上へ案内してね」と言って、メイドに結婚式の準備を指示しました。
「猫ちゃん、部屋を掃除して、おじいさん狐は、窓から捨ててしまいなさい。脂肪が乗った太った鼠を、時々持ってきてくれたけど、おじいさんときたら、いつでも、一人で食べてしまって、私には一つもくれなかった」
それから、若い狐との結婚式が挙げられ、皆で「めでたい、めでたい」と言いながら、踊りました。止まっていなければ、今でも踊っていますよ。
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